会長挨拶


2018年春、環境DNA学会が設立されました。これまで設立準備に関わってこられた多くの方々、また、ここ数年間の環境DNA技術の目覚ましい発展を支えてこられたすべての皆様に感謝申し上げます。

私たちは、現在、「ヒトと生態系の関わり」をめぐる様々な重要課題に直面しています。地球上に生息する一生物種であるHomo sapiens(=ヒト)は、他の生物と同様に生態系の提供するサービスに大きく依存する、いわば「生態系に生かされて」いる存在です。他方、乱獲や生息地破壊などの人間活動の増大に伴って生態系が大きく改変された結果、生態系サービスが劣化し、私たちの生存を脅かすまでになってきています。生態系の持続的利用をどう進めるか。生物多様性をいかにして保全するか。生物資源の管理はどうあるべきか。これらは対処が遅れれば遅れるほど解決が困難になるため、早急な対処が求められる人類共通の課題です。

水や土壌など環境中に存在する生物由来のDNAから生態系情報を得る環境DNA技術は、生態系を「みる」ための有力な手法です。ここ数年間における目覚ましい研究発展の結果、環境DNA技術を利用することで、いま生態系がどのような状態にあるか、どう変化していっているのか、また私たちの働きかけにどう反応したかなどの重要な情報を手に入れられることがわかってきました。また、この技術への社会的関心も高まっています。新聞やテレビ、雑誌などの様々なメディアで環境DNA技術が取り上げられる現在の状況は、環境DNA技術への大きな期待を反映したものと言えるでしょう。さらに研究を発展させ、社会実装を進めることで私たちは「ヒトと生態系の関わり」をめぐる様々な課題を解決することができるようになるかもしれません。

今後、環境DNA技術というこの有用な道具を活かすことができるかどうかは、科学者、行政、企業、市民など様々な立場のメンバーがいかに知恵を出し合い、未来に向けてのビジョンを共有し、連携の中でお互いを補い合い、共同していけるかどうかにかかっています。これを実現するために、環境DNA学会の第一期会長として精一杯やらせていただく所存です。この新しい学会が、人類全体の幸福のための環境DNA技術の発展、そして、その活用の仕組みの構築に大きく貢献していけるよう、皆様のご協力をよろしくお願い致します。

2018年4月18日

一般社団法人 環境DNA学会
会長 近藤 倫生