第2回環境DNA学会神戸大会が開催されました。
1.学術大会の開催
1)期日 :2019年11月3日、4日
2)場所 :神戸大学鶴甲第2キャンパス
3)参加者:正会員(一般)130名、正会員(学生)33名、賛助会員68名、非会員23名
4)講演数:自由集会3件、ポスター発表58件、高校生ポスター発表3件
5)公開シンポジウム:環境DNA技術の活用〜社会実装に向けて〜
6)企業展示:9件
大会プログラムはこちらからご覧ください。
2.ポスター賞受賞者・要旨集
最優秀賞 P01「魚類集団における遺伝的多様性の量的評価と集団遺伝学的解析への適用」
辻冴月(京大院・理)・芝田直樹(株)環境総合リサーチ)・沢田隼(龍大院・理工)・潮雅之(京大・白眉)
近年、環境DNA分析における新展開として、集団内におけるハプロタイプの網羅的な検出が行われ、その有用性が示唆された。しかし、ハイスループットシーケンシング(HTS)で得られるリード数はDNAコピー数を必ずしも反映しないため、これまで遺伝的多様性を量的に評価することは困難であった。…そこで本研究では、試料に内部標準DNAを加えることによりHTSを用いた網羅的な環境DNAの定量を可能にするqMiSeq法を用い、アユの野外集団における遺伝的多様性の量的評価を試みた。結果、得られた各ハプロタイプのコピー数は、捕獲調査におけるハプロタイプ頻度を非常によく反映することが示された。さらに、各コピー数を個体数とみなし、ヌクレオチド多様度や有効集団サイズを推定したところ、捕獲手法とほぼ同等の推定値が得られた。本研究により集団遺伝学や系統地理学への環境DNA分析の適用が今後ますます加速することが期待される。
優秀賞 P25「ダム湖における魚類環境DNAの鉛直分布」
速水花奈(神戸大・院・発達)・坂田雅之(神戸大・院・発達)・沖津二朗(応用地質(株)・稲川崇史(応用地質(株)・源利文(神戸大・院・発達)
環境DNA(eDNA)メタバーコーディング手法を用いることで、一度に多種のeDNAを検出できる。しかし、メタバーコーディング手法による検出種数はサンプリングの季節や場所によって変動することが明らかになっている。これまでのeDNAに関する研究では、多くの場合表層から水を汲んで分析が行われているため、水平方向のeDNA分布に比べて鉛直方向のeDNA分布は十分に調べられていない。そこで本研究では、ダム湖において季節ごとの鉛直方向における魚類eDNAの分布を調べた。福島県の三春ダムで各季節6地点において採水を行い、各地点につき表層から底層まで約5mに1回採水を行った。採水した水は、MiFishプライマーを用いてeDNAメタバーコーディング手法により分析した。発表では、魚類の生態とeDNAメタバーコーディング手法での結果を踏まえて、魚類eDNAの鉛直分布について議論したい。
3.公開シンポジウム
「環境DNA技術の現在と社会実装に向けた展望 Environmental DNA–Current Status and its Future Implementations」
2019年11月4日
13:30–13:35 環境DNA学会 会長挨拶
近藤倫生(東北大学大学院生命科学研究科)
13:35–14:05 環境 DNAの生物多様性保全施策への活用に向けた環境省の取組
串田卓弥(環境省自然環境局生物多様性センター)
14:05–14:35 環境 DNAの河川事業への適用を目指した検討について
中村圭吾(土木研究所)
14:35–15:05 水産庁事業における環境 DNA の活用とその関連研究について
堀正和(水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所)
15:05–15:15 休 憩
15:15–15:45 異分野融合による環境 DNA 研究の展開
赤松良久(山口大学環境DNA研究センター)
15:45–16:15 多地点・多種データから明らかにする沿岸魚類群集の形成要因
長田穣(東北大学大学院生命科学研究科)
16:15–16:45 環境 DNA 調査の普及にむけて ― 九州沖縄での活動事例
清野聡子(九州大学大学院工学研究院)
16:45–17:15 総合討論
4.自由集会
1.「オール北海道:北海道を舞台にした環境DNA研究」
企画者:荒木仁志(北海道大学大学院農学研究院 教授)
2019年11月4日
10:00-10:10:北海道を舞台にした環境DNA研究:特徴と展望 (荒木仁志(北大・院農))
10:10-10:25:野外定量への苦悩:「幻の魚」イトウの場合 (水本寛基(北大・院農))
10:25-10:40:“本シシャモ”の謎を追って:河川遡上と海域回遊 (八柳哲(北大・院農))
10:40-10:55:絶滅危惧種ニホンザリガニと外来種ウチダザリガニ (池田幸資(パシフィックコンサルタンツ、北大・院地環))
10:55-11:10:ニジマスと在来イワナ属は共存できるのか? (坂田雅之(神戸大・院・発達))
11:10-11:25:環境DNA分析によるウナギの分布推定 (笠井亮秀(北大・院水))
11:25-11:30:コメント:北海道から考える環境DNAの発展 (土居秀幸(兵庫県立大・院シミュレーション))
2.「環境DNA技術における基礎研究の現状と展望」
企画者:徐寿明(神戸大学大学院人間発達環境学研究科 博士後期課程)
2019年11月4日
10:00-10:05:趣旨説明 (徐寿明(神戸大・院・発達))
10:05-10:25:核およびミトコンドリアに由来する環境DNAの動態 (徐 寿明(神戸大・院・発達)、有本美於(神戸大・発達)、村上弘章(京都大・フィー研・舞鶴)、益田玲爾(京都大・フィー研・舞鶴)、源 利文(神戸大・院・発達))
10:25-10:40:環境DNA分析におけるPMA色素の有用性 (廣原嵩也(龍谷大・院・理工))
10:40-10:55:大型脊椎動物を対象とした環境RNAの検出と展望について (釣健司(龍谷大・院・理工))
10:55-11:10:環境DNAの基礎的情報の必要性と展望:定量的アプローチの視点から (深谷肇一(国立環境研究所))
11:10-11:20:環境DNA、環境RNA、そして環境タンパク質へ〜環境生理生態学への展望〜 (徐寿明(神戸大・院・発達))
11:20-11:30:質疑・総合議論
3.「NGSを用いた、環境DNA解析におけるメタバーコーディングの有用性」
企画者:小林孝史(イルミナ株式会社技術営業部 シニアアプライドゲノミクススペシャリスト)
李爽(イルミナ株式会社技術営業部 アプライドゲノミクススペシャリスト)
2019年11月4日
演題1) 趣旨説明:環境DNA解析における次世代シーケンサーを用いたメタバーコーディングの立ち位置、現状。およびメタバーコーディングに使用される次世代シーケンサーのご紹介 (小林孝史(イルミナ株式会社))
演題2) NGS初心者がiSeq100を使ってみたメタバーコーディング分析ができるようになるまで (大井和之((一財)九州環境管理協会環境部))
演題3) iSeqを用いた環境DNAメタバーコーディング〜MiSeqとの比較および実践事例の紹介〜 (中尾遼平(山口大学大学院創成科学研究科)